2021.05.25
ヒートショックという言葉を聞いたことはあるでしょうか?ヒートショックは、近年社会問題にもなっており、安全なはずの自宅内で高齢者の死亡事故を引き起こしてしまう非常に恐ろしい現象です。2018年に発表されたデータによると、栃木県が冬季の死亡増加率ワースト1位という驚きの結果となっています。ヒートショックを防ぐために考えておきたい家づくりについてまとめてみましたので、参考にしてみてください。
ヒートショックとは、急激な温度変化がからだにもたらす悪影響のことで、血圧や心拍数が大きく変動し心筋梗塞、心不全、脳卒中などの、突然死の原因となります。特に、冬は入浴中の死亡事故が多く発生し、なかでもヒートショックが原因での死亡率が高いと言われています。
比較的温暖な気候の栃木県のヒートショックによる死亡率が高い理由としては、栃木県は昼夜の寒暖差が大きく朝夕の冷え込みが激しく、高断熱住宅の普及率も低いことが原因と分析されています。
冬季の死亡増加率が最小の北海道や2位の青森県は元々寒い地方であるがゆえに、高断熱住宅が普及しています。冬の室温の暖かさ1位は北海道(20.7℃)、2位は沖縄県で(20.6℃)で栃木県は34位(18.4℃)でした。
また家の中の温度差を極力なくすような対策をしていることがヒートショックを起こしにくい要因ではないかと考えられます。
ヒートショックを起こしやすい場所としては、脱衣所や浴室、トイレなどです。これらの場所は、日本では日当たりの悪い北側に配置されることが多いと思います。北側は日が当たらないため、かなり冷え込みます。全国の家における冬の寝室の平均室温は10℃、トイレの室温は約8℃といわれています。布団の中がだいたい30〜32℃ですから、深夜トイレに起きただけでも、20℃以上の温度差があることになります。
また、これらの場所は扉を締め切っていることが多いため、暖房器具で暖めているリビングなどの空気が扉により遮られ、暖まることが中々難しい場所になってしまいます。
ヒートショックは温度差から引き起こされるものなので、いくつかの対策をすることで予防をすることが可能です。
①家全体を暖め、温度差をなくす
②脱衣室・トイレも暖める
③浴室内も暖める
④入浴前の水分補給
⑤早朝・深夜の入浴を避ける
⑥お風呂の湯温は41度以下
⑦冷水での洗顔や手洗いは避ける
などが挙げられます。
温度差があれば血圧が上下してしまうのは高齢者だけではなく、誰にとっても危険な症状だと考えなおきましょう。そのため、家づくりをするときには、最初からヒートショック対策を考えて必要となる設備選びが重要です。
ヒートショックを起こさない家づくりにおいて、まず考えておきたいのが高断熱住宅をつくるということです。高断熱住宅は、外壁や内壁の間に断熱材を充填したり、断熱性が高い窓を採用することにより、住宅全体の断熱性能を上げるものです。
断熱とは、文字通り「熱を遮断する」という意味ですので、床や壁、屋根から伝わる熱の流れをさえぎり、室内に寒さや暑さの影響を伝わりにくくすることです。
断熱されていない家は、例えば夏なら強い日差しが屋根にあたることで屋根面の温度が上がり小屋裏の温度も上がるので、家じゅうが蒸し風呂状態。窓を開けてもまったく涼しくなりません。高断熱住宅は冬場のヒートショック対策になるだけでなく、夏場に外気温の影響を受けてエアコンが効きにくいということも防いでくれるのです。
高断熱住宅を実現すれば、季節に関係なく室内の温度を適温に保つことが可能になり、ヒートショックの可能性を下げ、さらに冷暖房費の節約にもつながるのです。
最近の研究から、暖かい家に暮らす人は、寒い家に暮らす人よりも病気にかかりにくく、健康寿命が長くなる傾向があることが分かっています。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間と定義されています。暖かい家は血圧を安定させて心疾患・脳血管疾患を減らし、免疫力を保つことで感染症も減らします。また生活習慣病やロコモティブル症候群(足腰の衰えや転倒)の予防にも有効です。
健康的な室温は21℃、18℃未満になると健康リスクが増大すると言われています。家全体を暖かく(18℃以上)保つことは、ヒートショックを防ぎ、より健康的に長生きすることに繋がるのです。
脳卒中や心臓病といった循環器病に関する対策推進計画案
〇期間 2021~2023年
〇循環器病の予防や医療から治療と仕事の両立支援まで、循環器病対策を初めて総合的な計画に位置付けています。
〇2040年までに県民の健康寿命を3年以上延伸し、循環器病の年齢調整死亡率を減らすとの目標を掲げています。
〇ヒートショックに関する知識の普及啓発をはじめ、断熱住宅の新築やリフォームに対する国の補助制度の情報提供にあたることも盛り込んでいます。