2022.09.20
最近よく目にするようになったミニマリスト。「最小限の」という意味の「minimal(ミニマル)」から派生した造語で、日本では一般的に「物がないシンプルな生活」というイメージが強いように感じます。ミニマリストは2010年頃に欧米から発信され、「自分にとって本当に必要な物を厳選し、それだけを持って豊かに暮らすこと」が本来の目的であり、決して「物がないシンプルな生活」を推奨しているわけではありません。この目的は、家づくりにも通ずるところがあります。今回は、ミニマリストからヒントを得た本当に必要な物を厳選した”家づくり”を2回の分けてご紹介します。
ミニマリストとは元々は、美術や建築、音楽といった分野の装飾性を最小限まで削ぎ落とした作風のアーティストを指していました。「最小限の物で暮らす」という意味になってきたのは2010年後頃からで、大量生産・大量消費の現代社会において、新しく生まれたライフスタイルで、環境問題の深刻化なども背景にあると言われています。近年は、物だけでなく多くの情報が流通する中で、たくさんの物を手に入れても満たされなかったり、多くの物に埋もれて必要な物が見えなくなったりして生きづらさを感じる人たちが増え、自分にとって本当に大事な物を見極めて必要な物だけを取り込むことで楽に生きたいと共感が広がっているのかもしれません。「物を買うことで本当に自分は幸せになれるのか?」そのような疑問からミニマリストの哲学は生まれたとされています。
①住居ひと昔の「4人家族なら40坪は欲しい」「リビングは25帖が当たり前」「各部屋にクローゼット収納は必須」のような家づくりではなく、自分たちに必要な広さ、間取り、暮らしを追求した結果、小さな家を住まいとする方が増えています。例えば「えっ?27坪しかないの!?」と一見窮屈そうに感じる狭い家でも、様々な間取りの工夫によって快適に過ごすことができます。また、小さな家に住むことは、そもそも建築資材の削減につながりますし、小さな家ですと物をため込むことが難しくなり、必要最低限の物で暮らすこととなり、結果的にゴミの排出量などを少なくする効果があると報告されています。
②持ち物・使う物現代は、さまざまな物が安く手に入る時代です。プチプラ品やファストファッションなどは、大量生産のため安くて手に入りやすいため、購入側も飽きたら手放し、また新しい物を購入する傾向があります。さらに何度も同じものを使うより、使い捨てを多用する人も増加しています。ですが、この考え方はゴミを増やします。ミニマリストは、不必要な物や使い捨ての物、すぐに手放す可能性のある物を購入しないようにする人がほとんどです。自分にとって本当に必要な物だけをきちんと選んで購入し、愛着を持って長く使える物だけを購入しています。
③着る物アパレル製品の国内供給量は2017年時点で推計約38億点。1990年の20億点に比べるとほぼ倍増しています。日本でもファストファッションブームが拡大し、「服は使い捨てるもの」という前提のもと、メーカーは次々にトレンドに合わせた服を大量に生産しています。そしてその後、供給された衣料品のうち約4割は売れ残り、処分されていると推察されています。過剰生産で過剰消費・過剰廃棄というサイクルが、現代におけるファッションの当たり前になっています。これは、価格を抑えるために不当に安い賃金での労働を強いているという現状にもつながっています。ミニマリストは、流行によって次々と服を変えていく現代の生活スタイルとは違い、長く着続けることができる本当に気に入った物だけを購入します。
現代はどうやら捨てることだけに意識が向いていたり、シンプルな生活でのスタイリッシュさのみが強調されていたりすることが多いようです。断捨離という言葉があるように、物を捨てられるだけ捨て、また新しい物を購入したり、家に多くの物を置きたくないことから使い捨て品を多用したり、安くて手に入りやすい家を購入し、すぐに売却したりすぐに建て替えたり。消費削減を無視し、むしろ環境保全に反した行動をする人も多いのではないでしょうか。次回は、このミニマリスト生活からヒントを得て「本当に豊かで快適な暮らし」とは、「本当に必要な物を厳選した家」とは何かをお話ししたいと思います。→ミニマリストから学ぶ小さな家のすすめ②(10/4公開)
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