宇都宮市｜カフェのある高台の家

その後、いくつかの会社を検討したものの、最初に見た「空門の家」に勝る期待感はなかったというおふたり。第一住宅の家づくり勉強会にも参加し、建築家と直接会話ができたことで「この会社で間違いない」と確信したそうです。

おふたりが参加した勉強会の講師を務めたのは、全国の建築家のネットワークをいかして高性能なデザイン住宅を提案するR＋house所属の建築家である中村さん。
「中村先生の、『土地の形状をいかして家をデザインする』という話を聞いて、おっ！と思いました。じつは、祖父母の家があった土地を譲り受けていたのですが、道路とかなり高低差のある土地で。先生に相談したら『得意ですよ。現地を見てみたいですね』と言ってくれて、これはもうぜひお願いしたいと感じました」。

道路との高低差がある敷地は、言い換えればそれだけ見晴らしが良いということ。しかも、地域の花火大会を家から鑑賞できる穴場でもあり、Ａさんもかつてはおじいちゃんの家で特等席から花火を楽しんでいたそうです。
だからこそ、いちばんに希望したのは花火が見える大きな窓のあるリビングでした。

「希望通りに、大きな窓で開放感のあるリビングをデザインしてもらったものの、いざとなると通りからの目線が心配になってしまって」と苦笑するAさん。「相談したら、通りから家の中は見えないから大丈夫ですよと答えてくれました。正直、本当かな？と思っていましたが、実際に完成して通りから見上げてみたら家の中は全然見えなくて。さすが、と改めて嬉しくなりました」と笑顔で言葉を続けます。

大窓のあるリビングと、もうひとつ、Ａさんご夫妻には大切なリクエストがありました。それは、夫人が営むカフェを併設することです。
「昔から自分のカフェを開くのが夢で、コーヒーショップ等で働いて経験を積みました。独立して自分の店を持ちましたが、居抜きの物件だったので色々と制約もあって。だから、いつかは自分の好きなようにデザインした空間で、街に溶け込むような小さなお店を開きたいと思っていました」と夫人。おふたりにとっての家づくりは、夫人の夢を叶えるという大切な意味もあったのです。

夫人が思い描いたお店は、自分ひとりで営むことができる規模感のカフェスタンド。自慢の眺望を楽しむことができる窓際にカウンター席を設け、「５席くらいの小ぢんまりした空間で、コーヒーとケーキでちょっとひと息ついたり、テイクアウトして楽しんだりしてもらえるようなお店にしたいです」と夫人。
来春のオープンを目指して準備中で、メニューはコーヒーと自家製のフルーツサンドやケーキ。これまでの経験をいかしてラテアートも提供予定とのことで、オープンが楽しみです。

Ａさん邸の家づくりの思い出には、カフェ併設ならではのこんなエピソードも。「カフェの入り口のドアは素敵なデザインのものにしたかったのに、法令上の問題でひとつの家に玄関ドアを２つつけることができず、片方は勝手口のようなドアにするしかなくて。『そんなの絶対イヤ！』と相談したら、いろいろと調べてくださり、店舗スペースを土間フロアではなく床張りにすればOKとの答えを見つけてくれたんです。無理です、と切り捨てるのではなく、私がどうしても譲りたくない部分にとことん寄り添ってくれる姿勢がとても嬉しかったです」

一方、「基本的には、妻に『家づくりはぜんぶ好きにしていいよ』と伝えていました」と笑顔で話すAさんですが、リビングの大窓をはじめ、ゴルフバッグが置けるシューズクロークや高級感のあるバスルームなど、こうしたいという希望はやはりたくさんあったそうです。

「カッコいいかなと思って、バスタブを黒にしたい、玄関ポーチの下に間接照明を入れたいという希望も出したのですが、どちらも却下されました（笑）とくに、黒いバスタブは水アカが目立つから絶対やめたほうがいいとコーディネーターさんにも渋い顔をされて諦めました」と、苦笑いしながらも楽しそうに振り返るＡさん。「どうせ使わないでしょ。電気の無駄」と一度は却下された間接照明は寝室に採用され、やわらかな灯りでくつろぎの空間を演出しています。

「賃貸アパートや社宅で暮らしていた頃は何だか落ち着かなくて、休みの度に出かけていました。今はむしろ家にずっと居たくて、生活がガラリと変わりましたね。今年の夏はわざわざ暑いところへ出かけるよりも家が最高と感じて、ほとんど外出しませんでした」と、快適なマイホームを満喫しているご様子のA さんご家族。涼しくなったらお友達を呼んでバーベキューをしたり、ホームパーティをしたり、「人が集まる家にしたいですね」と楽しみは広がります。